○井上哲士君 日本共産党を代表して、二〇二四年度補正予算案に対し、総理に質問します。
元日の能登半島地震からもうすぐ一年。九月には豪雨災害に襲われました。
豪雨の直後に、輪島市の避難所や浸水した仮設住宅でお話を聞きました。地震で自宅が被害に遭い、避難所から金沢に二次避難し、仮設住宅に当選して八か月ぶりに帰ってきたらすぐに浸水被害を受けて再び避難所に入った。振出しに戻った、心が折れる、見捨てられたような気持ちなど、悲痛な声が耳に残っています。
災害関連死は二百四十七人となり、地震による直接死を超えました。先が見えない中、人口流出が続き、奥能登四市町では四千百五十六人、七・五%も人口が減りました。
総理は先日の答弁で、災害を防ぐことはできない、しかし、その後に起こることは全て人災なのであるという言葉を胸に刻んでいると述べられました。能登の現状は、政治の責任が問われている人災というべき状態ではありませんか。
被災者に見捨てられたなどと思わせることは絶対あってはなりません。大地震と豪雨の複合災害として必要な対策を届け、関係自治体の体制強化も含めて国の責任を果たし、能登で暮らし続けられる希望を持てる支援をすることこそ政治の役割です。
具体的に聞きます。
被災者の医療費、介護利用料の窓口負担の免除は年末まで延長されています。実態を見れば、当然再延長すべきです。安心して新年を迎えられるように、年末ぎりぎりではなくて早期に延長を決めるべきではないですか。
被災した特養ホームなどの介護施設から広域避難した被災者の利用料は免除されています。被災施設が復旧しても、避難した職員が戻れず、元どおりの入所者の受入れが困難なのが実態です。ところが、それは人員不足であり災害とは関係ないなどという機械的な対応で、広域避難の避難者に食事代などの負担が押し付けられています。実態と乖離した対応をやめ、免除を続けるべきです。答弁を求めます。
公費解体や住宅再建などの支援を受けるには罹災証明書が必要です。ところが、自治体による住宅被害認定の判定結果が実際の被害と乖離があるなど不服だとして、能登四市町では一次調査が行われた住宅の約三〇%で二次調査が行われています。被害判定により支援額が大きく変わるので、このままでは住宅再建の見通しが立ちません。
建築の専門家ではない自治体職員が調査する難しさが指摘をされており、防災担当大臣も、現場からかなり調査結果に対して不満の声も要望もあったとして、検証して改善すると述べています。宅地被害も含め、住宅としての失われた機能を反映した判定基準に改善する、同時に、直ちに専門性を持った職員の派遣など支援を強化すべきではないですか。
被災者生活再建支援法による最大三百万円の支援金ではとても住宅再建はできません。法改正当時と比べ建設費は大きく値上がりし、政府も建築費の高騰を理由に能登での災害公営住宅の整備への補助限度額を見直すとしています。
能登六市町にとどめている臨時特例給付金を被災地域全体に広げるとともに、被災者生活再建支援法の支援対象の拡大や六百万円以上への支援金引上げは急務です。答弁を求めます。
避難所では、床に雑魚寝し、温かい食事も提供されない劣悪な状況が長く続きました。総理は所信演説で、避難所の満たすべき基準を定めたスフィア原則を発災後早急に全ての避難所で満たすことができるようにするとしました。
能登では現在も、温かい食事の提供やプライバシーの確保が十分ではありません。直ちに点検し、改善すべきではないですか。
三月の予算委員会で、避難所・避難生活学会が提唱しているトイレ、キッチン、ベッドを四十八時間以内に避難所に届けるTKB48を示して備蓄強化を求めました。
地方自治体がキッチンカーやトイレトレーラー、段ボールベッドなどの備品を取得するための財政支援をどうするのか、地方自治体や民間団体が所有する備品を被災地に迅速に届け、活用するための仕組みと体制をどう構築するのか、さらに、分散備蓄のために、現在は立川市一か所の国の備蓄拠点をどう増やすのか、お答えください。
体調などを理由に在宅避難を選ぶ高齢者や障害者の実態把握や支援の遅れも問題です。国として、地方自治体の取組への支援の強化とともに、災害救助法の対象にこうした福祉支援を加え、国が費用を負担するようにするべきではないですか、お答えください。
各地で、有機フッ素化合物、PFASによる汚染に不安が広がっています。補正予算には対策技術実証事業が盛り込まれていますが、それだけでは不十分です。
食品安全委員会が六月に取りまとめた評価書でのPFOSとPFOAの耐容一日摂取量の指標値は、米欧の数十から数百倍の摂取を問題ないとする非常に緩い値です。米欧は、疫学調査を重視して予防的に対応する予防原則で進めています。日本も、手遅れで健康被害を生まないように、国際水準での対策へ改善すべきではありませんか。
この間、在日米軍や自衛隊基地周辺の水路などで高濃度の汚染が発見され、基地内での泡消火剤の使用による土壌汚染が疑われています。
ところが、在日米軍は日本側による基地内の立入調査を拒否しています。更に強く立入りを求めるとともに、日米地位協定の環境補足協定を実効あるものに改正すべきではないですか。
自衛隊も、因果関係が明らかでないとして基地内の調査を拒否しています。しかし、因果関係の有無やその内容を明らかにするためにも調査が必要です。自衛隊は、住民や地方自治体の調査要請に率先して応じるべきではありませんか。
航空自衛隊基地のある岐阜県の各務原市では、水道水源地から高濃度のPFASを発見し、検出し、市は浄化対策に十年間で二十三億円が必要です。各地の水道事業の維持が困難になっている中、PFAS対策は新たな負担になっています。国として財政支援をすべきではないですか。
高濃度汚染が生じた岡山県の吉備中央町では、先日、町が住民の血液検査を行いました。政府はこれまで、血液検査を行うとかえって不満が増すとしてきましたが、先月末に公表された自治体向けの対応手引きの改定版では、疫学研究をする上で血液検査も考えられると明記されました。調査手法として有効性を認めたということですね。
今後、住民の不安に応えて自治体が行う血液検査にも支援をするべきではありませんか。
補正予算案は、大企業に大きな支援をする一方、国民生活打開のための施策は一時的、部分的なものにとどまっています。
さらに、軍事費は、補正予算としては過去最大で、能登震災対策費の三倍の八千二百六十八億円が計上され、今年度予算と合わせて九兆円近くになっています。
最新鋭の装備や一二式地対艦誘導弾などの取得とともに、米軍再編経費として、馬毛島への米空母艦載機訓練場建設や、沖縄県の辺野古の米軍新基地建設の予算が計上されています。これがなぜ経済対策なのでしょうか。
加えて、陸上自衛隊V22オスプレイの移駐に伴い、佐賀駐屯地の開設で三百八十億円を計上しています。この間、重大事故を繰り返し、欠陥機と指摘されているオスプレイの配備は、国民の安心、安全のための経済対策と逆行しているではありませんか。
こうした軍事費は、災害や景気対策など、本予算編成時に想定されなかった事故に対応するためという補正予算の趣旨を逸脱したものではありませんか。
以上、答弁を求めて質問を終わります。
○内閣総理大臣(石破茂君) 井上哲士議員の御質問にお答えを申し上げます。
能登の現状についてのお尋ねを頂戴をいたしました。
災害を防ぐことはできないが、その後に起こることは全て人災であるというのは、阪神・淡路大震災のときに後藤田正晴先生がおっしゃっておられたことでございます。私、よくそれ覚えております。早く元の生活に戻りたい、ふるさとに帰りたいと切に願っておられます被災者の思いを十分に受け止めなければなりません。政府といたしまして、活気ある能登を取り戻すための努力を続けてまいりたいと思いますし、この言葉、私自身よくかみしめて対応いたしてまいらねばならないと思っております。
これまで合計七千百五十億円の予備費を活用して、県と被災市町と緊密に連携をし、被災者の方々の避難支援、インフラ復旧、生活、なりわい再建支援、住まいの確保、公費解体の加速化など、切れ目なく取り組んでまいったところでございます。
今回の補正予算では、豪雨により再び被災された方々も含め、状況に応じて切れ目ない対応を迅速に行うため、被災地の要望も伺いながら、例えば、災害公営住宅の整備への支援拡充、農地の復旧や、宅地、農地などにまたがって堆積した土砂、瓦れきの一括撤去、豪雨の被災者にも地震と同様の雇用調整助成金の特例の創設、住宅再建支援、なりわい再建支援、公費解体など、被災者ニーズが高い二千六百八十四億円の施策をきめ細かに講ずることといたしております。
引き続き、被災自治体のお声も伺いながら、一刻も早い復旧と創造的復興に向けた取組をいたしてまいります。
被災者の方々の医療、介護の窓口負担の免除についてでございます。
令和六年能登半島地震による被災者などの医療、介護につきましては、医療機関の窓口での一部負担金や介護利用料の支払を市町村などが免除した場合に、その免除分を国が財政負担をいたしており、平成六年十二月までの免除分を対象といたしております。
その後の支援につきましては、被災状況や市町村などの意向も踏まえて検討を行っており、速やかにお示しをいたしてまいります。
住家、住屋の、住みかの住被害認定についてのお尋ねがございました。
被害認定調査は、被災者生活再建支援金の支給を始めとする各種支援の根拠となりますことから、迅速に行う必要がございます。
このため、大規模な災害が発生した場合には、被災自治体の職員だけで対応するのではなく、ほかの自治体や民間団体から職員の応援派遣を受け、被災された方々への迅速な支援に当たることといたしております。
今般の能登半島地震やその後の豪雨におきましても、被災地では、受援体制を構築し、全国の自治体から職員の応援派遣を受けたほか、行政書士が被災者による罹災証明書の申請手続をサポートし、不動産鑑定士が専門的立場から自治体職員と協働で被害認定調査を行うなど、官民連携による取組が進められました。
また、被害認定調査は、簡易な外観調査として一次調査を実施し、被災者から御依頼があればより詳細な二次調査を行うことといたしております。奥能登四市町では、二次調査に進んだのは、現時点で、御指摘のとおり、全体の調査件数の約三〇%であると承知をいたしております。これは熊本地震の際の比率と同程度ではありますが、被災された方々に被害認定調査の結果に納得感をお持ちいただき、早期の生活再建を実現いたしますためにも、被害認定調査の在り方について不断の見直しを図ることは重要であると考えておりまして、このような観点から、現在、被害認定調査の手法、被害認定に係る基準の在り方などにつきまして、能登半島地震での事例を基に検証作業を進めております。得られました教訓を今後の取組に生かしてまいらねばならないと考えております。
被災者生活再建支援金及び地域福祉推進支援臨時特例交付金についてでございますが、能登半島地震の被災者の生活支援と、生活再建支援といたしましては、御指摘の最大三百万円が受け取れる被災者生活再建支援金に加えまして、石川県とも調整の上、能登地域六市町を対象とした、最大で被災者再建支援、被災者生活再建支援金と同額が受け取れる地域福祉推進支援臨時特例交付金を創設いたしました。この特例交付金は、六市町が極めて甚大な被害を受け、高齢化が著しく進み、半島という地理的制約から地域コミュニティーの再生が大きな課題であったことを踏まえたものでございまして、このようにして能登地域の実情、特徴を踏まえた支援を行っております。
御指摘がありました特例交付金の対象地域拡大などは困難でございますが、このほか、特例交付金の支給対象外の世帯につきましても、被災者の状況に応じまして、復興基金を活用した事業の活用が可能でございます。引き続き、生活再建が図られますよう、これら総合的な枠組みにより支援をいたしてまいります。
避難所の環境についてでございます。
スフィア基準は、避難所の質の向上を考える際に参考にするべき国際基準であり、確保をすべきトイレやお風呂の数、食事環境、一人当たりの居住スペースなどについて記載されているものでございます。
本年十一月、能登半島に所在する全ての避難所につきましてスフィア基準を満たしているかどうか確認をいたしましたところ、全ての避難所において避難生活の質が確保できていることが確認できました。また、最近でも、企業、業界団体の御協力の下、温かい食事を提供できるキッチンカーを派遣いたしておるところでございます。
引き続き、現地のニーズを把握しながら必要な支援を行ってまいる所存でございます。この点につきましては特に留意をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
災害時に必要な物資等の備蓄、調達に関する取組についてでございますが、今般の補正予算においては、キッチンカー、トイレカーなどの整備も含め、避難所の生活環境の改善に資する自治体の先進的な取組を支援するための新地方創生交付金の予算を計上いたしました。
また、災害時に利用可能なキッチンカー、トレーラーハウス、トイレトレーラーなどを平時からデータベースに登録しておき、発災時の対応に活用する方針でございます。
加えまして、国による全国各地への迅速かつ確実な物資のプッシュ型支援を可能といたしますため、現在の立川防災合同庁舎に加えまして、新たに全国七か所におきまして分散備蓄をすることといたしております。
福祉支援の強化についてでございますが、議員御指摘のとおり、災害時における福祉サービスの充実は、被災者の生活環境の向上、災害関連死の防災のために、防止のために極めて重要なものでございます。
能登半島地震に際しましても、避難生活の長期化が見込まれましたことから、全国規模でのDWATの編成を初めて行い、避難所において、被災者の方々の健康状態の確認や各種相談への対応、食事、トイレなどの日常生活の支援など行ったところでございます。
現在、政府におきましては、災害時における福祉的支援の充実、円滑化を図るため、DWATの活動範囲を見直しますとともに、災害救助法で想定される救助活動に福祉の観点を盛り込み、これを国庫負担の対象とすることを検討いたしております。
災害時におきましても、高齢者、障害者、乳幼児を始めとする要配慮者の方々への支援が着実に行われますよう早期に結論を得てまいりたいと、このように考えておるところでございます。
PFASについてでございます。
PFASのうち、PFOS、PFOAなどにつきましては、国際条約に基づきまして、我が国におきましても製造、輸入などを原則禁止するなど、予防的な取組方法に基づいて対策を講じてまいりました。
諸外国における耐容一日摂取量につきましては低いものから高いものまであります中で、我が国では本年六月には、内閣府食品安全委員会におきまして、諸外国が指標値の設定などのために用いました科学的知見も含めまして、専門家が一つ一つ丁寧に精査をいたしました上で、活用可能と判断される科学的根拠を基に耐容一日摂取量を設定をいたしたところでございます。
この耐容一日摂取量を踏まえまして、現在、水道水質の在り方について専門家会合で検討いたしており、今後、専門家の御意見も伺いながら、水道事業者などに遵守や検査及び公表を新たに義務付ける水道法に基づく水質基準への引上げを含め、来春を目途に対応の方向性を取りまとめてまいります。
在日米軍施設・区域や自衛隊基地周辺でのPFAS汚染についてのお尋ねでございます。
PFOSなどをめぐる問題につきまして、地域住民の皆様方が御不安を抱えておられることは承知をいたしております。
在日米軍との関係では、これまでも現にPFOSなどの漏出が起こりました際には、環境補足協定に従い、施設・区域内への立入りなどを実施しております。
防衛省・自衛隊では、これまでも、地元自治体などの要請を踏まえつつ、必要に応じ自衛隊基地内において水質調査などを実施しており、因果関係が明らかでないことを理由に基地内の調査を拒否したとの事実はございません。
政府といたしましては、引き続き、関係自治体、関係省庁と緊密に連携し、必要な対応を行ってまいります。また、日米地位協定、環境補足協定及び関連する諸合意の下、在日米軍施設・区域内外の環境対策が実効的なものとなりますよう、お尋ねの施設・区域への立入り申請も含め、取り組んでいく考えでございます。
PFASに関しまして、水道事業への財政支援及び血液検査についてのお尋ねを頂戴いたしました。
PFOS及びPFOAの濃度が暫定目標値を超過した水道事業者などについて、技術的支援とともに浄水処理施設の強化などの財政的支援に取り組んでまいります。
血液検査の有効性につきましては、現時点ではどの程度の血中濃度で健康影響が個人に生ずるか明らかではなく、血液検査の結果のみをもって健康影響を把握することは困難であるとされているところでございます。
政府といたしましては、PFASと健康影響の関係性を明らかにするため、血中濃度の情報のみならず、個人の摂取情報や長期間にわたる健康調査の結果を対象とする科学的に評価可能な疫学調査、研究を更に推進をいたしてまいります。
現段階で地方公共団体が取り組む対応といたしましては、既存統計の活用による地域の傾向把握に取り組むとともに、既存の健康診査の定期受診を推進することが考えられるところでございます。
オスプレイの配備についてのお尋ねでございます。
国民の安心、安全の確保は、本日ずっと申し上げましたように、成長型経済へ移行するための礎となるものでございます。
安全保障環境が厳しさを増す中、オスプレイは、自衛隊が機動的に展開する能力を高め、島嶼防衛能力を強化するために不可欠の装備品であるとともに、災害救援や離島における急患輸送でも重要なものでございます。
そのため、令和六年度補正予算案では、佐賀駐屯地へのオスプレイ配備に伴う施設整備に要する経費として、本予算編成後に判明した地盤改良に必要な経費など、緊要性のある経費を計上いたしました。
政府といたしましては、引き続き、防衛力の抜本的強化に向け、佐賀駐屯地へのオスプレイの配備を含みます各事業を着実に進めていく考えでございます。
以上でございます。
本会議(2024年度補正予算案)
2024年12月 9日(月)