○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
一昨日成立した補正予算には、保育士等の人件費を一〇・七%引き上げ、現状からの大脱却を図るとして、保育士、幼稚園教諭等の処遇改善が盛り込まれました。しかし、この保育士等には、保育士と同様に働く親の子供たちに関わる学童保育の指導員が含まれておりません。
これには、全国福祉保育労働組合の皆さんから、二〇二二年二月から実施された月額九千円の処遇改善のときは学童保育も、指導員も対象だったのに、今回の補正予算ではなぜ対象外なのかと激しい怒りの声が寄せられております。
三原大臣は、こうした声をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 子供たちの放課後における健全な居場所確保のためには、放課後児童クラブの職員の皆様が不可欠であることは言うまでもなく、職員の処遇改善は重要な課題と認識をしております。
御指摘の人事院勧告を踏まえた対応については、必ずしも保育所等と同じタイミングではないものの、これまで累次実施をしてまいりました。加えて、先ほど委員からお話ありました職員の処遇改善は、これまでも収入を月額九千円程度引き上げるなど、様々な支援を継続的に行っております。
更なる処遇改善につきましては、引き続き毎年度の予算編成過程の中で対応をしっかりと検討してまいります。
○井上哲士君 こども家庭庁の説明では、この人勧の引上げ分が学童クラブの指導員の賃金に含む運営費に反映されるのは、二年後、二年遅れだというんですね。ですから、二〇二五年度は二〇二三年度の人勧が反映されると、こういうことになるんですよ。
私、大臣、この学童保育の指導員がどれほど低い賃金で働いて苦労しているのかを御存じなのかなと、こう思うわけです。保育士は全産業平均よりも約五万円低いと言われておりますが、学童クラブの指導員はもっと低いんですね。
二〇二三年三月の調査でいいますと、学童クラブの職員の給与と賃金構造基本統計調査の保育士の給与を比べると、年収で百万円以上の差があります。その学童クラブの指導員の処遇改善が保育士よりも二年遅れでは、いつまでたっても学童クラブの職員の処遇改善は置き去りにされたままになると思うんです。
学童クラブの職員の処遇改善というならば、保育士はもとより、全産業平均との格差をなくすということを明確な目標に掲げて、それにふさわしい抜本的な処遇改善策と予算を確保すべきじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 放課後児童クラブの職員の賃金を考えるに当たっては、クラブが小学校の授業終了後から開始されるものであり、開所時間は保育所ほど長くないこと等に留意する必要もあると考えております。
一方で、子供たちの健全な育ちを考えたときに重要な役割を担い、魅力的な放課後児童クラブの仕事というのが、従事する職員にとって処遇面でも納得感のあるものとなるようにすべきだと考えております。
十八時三十分以降に開所しているクラブでの賃金改善に対する費用の補助、そしてまた、勤続年数ですとか研修実績等に応じた賃金改善に対する費用補助、そしてまた職員の収入を月額九千円程度引き上げるための措置に対する費用補助、これを継続しております。
そして、加えて、令和六年度には、人材確保や支援の質の向上を図る観点から、常勤職員を二名以上配置した場合の運営費補助基準額の引上げや、待機児童が多く発生している自治体における職員確保の取組を支援する事業を行っています。
こうした取組通じて、放課後児童クラブの職員の処遇改善、これが実施されますよう、引き続き、自治体にこれらの事業の活用もしっかりと周知をしてまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 私、学童保育のこの指導員の専門性というものをしっかり認識をして、それにふさわしい処遇を、必要だということを繰り返し求めてまいりました。
今回の補正予算にこの学童保育指導員の処遇改善は盛り込まれませんでしたが、一方で、待機児童解消のための預かり支援実証モデル事業、放課後児童クラブ職員確保・民間事業者参入支援事業というのが措置をされております。
今朝の読売新聞の一面で大きく報道していますが、この預かり支援実証モデル事業は、既存施設を活用する、配置される職員は放課後児童支援員かどうかは問わないと報道されております。それから、職員確保・民間事業者参入支援事業は、民間事業者の参入を促進する事業などを支援するというんですね。これは全額国庫負担と。
これ、待機児童解消といって、とにかく子供たちの放課後の居場所をつくるためなら施設の基準や職員の専門性は問わないと、民間参入を促進をして人材を確保すると。私は、こういうことではなくて、専門性のある指導員の賃金を引き上げて人材を確保して、学童保育の専用の施設整備を広げることにこそ予算を使うべきだと、それでこそ、子供たちや父母も、そして現場の指導員も望むことだということを思っております。そのことを強く申し上げておきます。
三原大臣、ここはここまでで結構です。
○委員長(和田政宗君) 三原大臣は御退席いただいて結構です。
○井上哲士君 岐阜県の大垣警察署が、風力発電所の建設をめぐって学習会を開いた市民などの個人情報を収集し、発電所を計画している中部電力会社の子会社、シーテック社に提供した、大垣警察市民監視事件についてお聞きします。
名古屋高裁は、九月の十三日、この大垣署の公安警察が行った個人情報の収集、保有、情報提供の活動が憲法と警察法第二条二項に違反するとして、原告らに約四百四十万円の損害賠償と、警察に対して収集した個人情報の抹消を命じました。岐阜県警は上告を断念し、判決は確定をしております。
この問題は、当委員会でも議論になってきました。二〇一五年の当委員会で山下芳生議員が行った質疑で、当時の国家公安委員長は、この大垣警察警備課による情報収集や事業者への情報提供活動は通常行っている警察業務の一環だと答弁をしております。
その通常の業務と答弁をしてきた活動が違法だとした今回のこの高裁判決を、国家公安委員長、どのようにお受け止めでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) お尋ねの判決につきましては、九月の十三日に名古屋高裁において言い渡され、確定したところでございまして、この判決を私としても重く受け止めているところでございます。
大垣署員の活動は通常行っている警察業務の一環であるという過去の答弁につきましては、この警察活動は公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであり、この大垣署員の活動もそのような考え方を念頭に置いて行われたものであるとの趣旨であると理解をいたしております。
しかしながら、結果として、今回の判決により大垣署員の活動は違法だとの判断が示されたところであり、岐阜県警察におきましては、判決確定後速やかに、判決において抹消が求められた原告の方々の個人情報を抹消したものと承知しております。
今後とも、不偏不党かつ公正中正に職務を遂行するよう警察を指導してまいりたいと思います。
○井上哲士君 そうやって念頭に置いてと言われて認めた活動が違法だと断じられたわけですね。
警察庁も同様に、この大垣警察警備課の活動について、通常行っている警察業務の一環だと答弁をしてまいりました。
お手元の資料の二、判決でありますけれども、この大垣の活動について、更に広域的な情報収集活動もうかがわれ、大垣警察のみによってされてきたとは考え難く、岐阜県警として指示ないし監督の下に、岐阜県警の複数の部署において組織的に行われていたものと認められるし、警察庁の一定の関与の下に行われてきた可能性も否定できないとしております。
警察庁、違法とされた大垣警察と同じような活動を警察全体で行っているということですか。
○政府参考人(迫田裕治君) 警察活動は、公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであり、大垣署員の活動もそのような考え方を念頭に置いて行われたものと承知をしております。しかしながら、結果といたしまして、今回の判決により大垣署員の活動は違法との判断が示されたところであります。
その要因は、警察の情報収集活動という事柄の性質上、岐阜県警察からその目的、対応などを明らかにすることができなかったことにあると考えておりますけれども、警察といたしましては、この判決を重く受け止め、判決確定後速やかに判決で示された原告らの情報を抹消したところであります。
その上で、一般論として申し上げますと、警察の情報収集活動については、目的の正当性、行為の必要性及び相当性という過去の判例で示された基本原則がありますけれども、そうした原則を遵守して行われるべきことは当然でありまして、警察全体で違法な情報収集活動が行われているというような御指摘は当たらないと考えております。
○井上哲士君 皆さんがそうやってやってきたことに、今回判決が下ったわけであります。
お手元に資料一、通達をお配りしておりますが、警察庁は十月の三日、適切な情報収集活動についてという通達を発出しております。そこでは、今もありました判決を重く受け止める必要があるとしていますが、問題は、何を重く受け止めてどう改善するかなんですね。
資料三を見ていただきますと、判決は、この警察の情報収集活動について、法律上の明文の根拠がなく、収集される国民のプライバシー権などを侵害、制限するものだとし、捜査機関が情報収集活動などを行うことを正当化する個別的な根拠が、個別的、具体的な根拠が必要であり、これを主張、立証する責任を負うとして、警察側に立証責任を課しております。
岐阜県警は、今もありましたように、基本的にはそういう考えでやっていると言いましたけれども、この個別具体的な主張、立証をしなかった、そして断罪をされたわけですね。一方、確かに通達では、警察法第二条に基づく情報収集活動は目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則を遵守し行われるべきことは当然であり、この点を踏まえ、引き続き、適切に情報収集活動を行うこととされたいと、こうしております。
しかし、引き続き適切にといいますけれども、皆さんが通常行っているとした活動が適切でなかったと、そのことの主義主張もしなかったと、だから違法判決が言い渡されたんです。
だとすれば、皆さんはこれは上告せずに確定をしたわけですから、今後は、判決にあるとおり、個別的、具体的に情報収集を行う目的、必要性、方法の相当を主張、立証すると、今後は。こういうことでよろしいですね。
○政府参考人(迫田裕治君) 二点御質問いただいたと理解しました。
まず、重く受け止めるとはどういうことかということですけれども、警察活動は、公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであり、大垣署員の活動もそのような考え方を念頭に置いて行われたものであるということでございます。
しかしながら、結果として、今回の判決により大垣署員の活動が違法との判断が示されたこと、このことにつきまして、控訴審の判決を重く受け止めているところでございます。
それから、二つ目の御質問でございます。
委員、判決を引用いただいて、個別的、具体的に情報収集を行う目的、必要性、方法の相当性を主張、立証していくことだ、ですかという御質問と承りましたけれども、本件の原審及び控訴審におきましては、警察の情報収集活動という事柄の性質上、岐阜県警察からその目的、態様などを明らかにすることができなかったところでありますけれども、判決内容のうち、お尋ねで引用をされた部分につきましては、本件情報収集活動の適法性を主張するのであれば、訴訟の場において被告、県側からその目的、必要性などを個別的、具体的に主張、立証すべきであったと、そういった趣旨であるというふうに理解しております。
警察法二条に基づく情報収集活動は、目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則を遵守し行われるべきことは当然であり、個別具体の場面に応じてその点について適切な判断がなされるよう、先ほど委員御指摘もありました通達もありますけれども、都道府県警察を指導して、しっかり指導してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 結局、個別具体的には明らかにしないということなんですよ。その考えでやっているというばっかりでね。
今の資料三の右にありますように、右の上にありますように、結局こう言っているんですね。これまでのような公共の安全と秩序の維持を名目としてフリーハンドで活動することは許されないとしているんです。今の答弁、これ全く受け止めていないんですよ。結局、同じように、これまで考えはちゃんとしていたんだから、今後も一つ一つ明らかにしないと。これは、全く私は判決を無視していると思いますよ。
国家公安委員長、お聞きしますけど、九月二十六日に国家公安委員会で、この判決の報告受けて議論をしています。議事録を読みますと、委員から、個人情報に対する意識が高まっているので、警察として本判決を真正面から受け止めて対応すべきであると、警察が行う情報収集と情報については、後日の裁判での説明、立証に使える資料を作成しておくようにすべきではないか、本判決を受けて、全国警察に対してどのような指導を行っていくのかよく検討してもらいたいと、公安委員の皆さんからこういう発言が出ております。
国家公安委員長、この判決に基づいたこの議論も踏まえて、全国警察に対してどのような指導を行っていくんですか。
○国務大臣(坂井学君) 国家公安委員会の委員の先生方からもそういった御指摘がございました。
目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則は遵守をして行われなければなりません。そして、捜査、現場では個別具体、それぞれの場面が生じるわけでございますので、その点につきまして適切な判断がなされるように、これはしっかり指導をしてまいりたいと思っております。
○井上哲士君 そういう考えだからといってフリーハンドでは駄目で、一つ一つきちっと明らかにする必要があると、その準備をする必要があると言っているのに、全くそういう状況ではありませんし、今の国家公安委員長の答弁でもそれは甚だ不十分だと思うんですね。
そこで、今回の事件では、大垣警察とシーテック社が四回にわたって情報交換を行った際にシーテック社が作成した議事録が大きく報道されました。原告がそれを証拠保全手続で入手をして、そこに赤裸々に警察署が市民運動を敵視して情報を提供していることが記載をされております。判決は、この議事録に基づいて抹消すべき個人情報を物件目録に明示した上で各情報を抹消せよと命じております。岐阜県警は、判決を受けて四十九件の該当文書を確認し細断をしたと言いますが、原告は、この四十九件で本当に全てなのか、メールや電子データはなかったのかと、到底納得できないと抗議をしております。
私、当然の声だと思うんですが、国家公安委員長はこの原告の声にどのような御見解ですか。
○国務大臣(坂井学君) お尋ねのあった個人情報の抹消につきましては、岐阜県警察におきまして、警備部内各課及び各警察署の警備課において保有しているこの電磁的記録を含む文書の中から、判決において抹消が求められた原告の方々の個人情報が記載されているものを漏れなく特定し、岐阜県公安委員会委員長立会いの下、シュレッダーによって細断処分したと報告を受けております。
その上で、岐阜県警察におきましては、情報の抹消後速やかに原告の方々にその旨を通知しておりますし、原告の方々からの申出を受けて説明の場を設け、抹消の経緯等について可能な限り丁寧に説明したものと承知をしており、今後も、原告の方々の要望に応じて改めて説明の場を設けるなど、適切に対応するものと承知をいたしております。
○井上哲士君 きちっと説明をしていただきたいんですが、お手元の資料五を見ていただきたいんですけれども、原告らが、支援団体、物を言う自由を守る会とともに岐阜県警から説明を受けて作成したものですね。名古屋高裁が抹消を命じた各個人情報の内容と岐阜県警が細断をした四十九件の文書が、それぞれ物件目録にあるどの個人情報に関係する文書なのか、整理して一覧にしてあります。
例えば、右下の原告Fさんでありますけれども、物件目録の七十四ページにある個人情報の項目ア、イ、ウ、エ、オとありますが、このウ、エ、オについては、全国に広がっていくことを懸念しているという情報、それからFは入院中であるので、即、次の行動には移りにくいと考えられるといった情報、これは議事録にあるわけですよ。だから、この物件目録にあるんですね。ところが、これに対応する細断文書はないんです。ゼロなんですよ。ほかにもたくさんゼロ件があるんですね。この警察との情報交換の議事録に書かれているのに、それに対応する警察側の情報がないと、だから抹消していないと。これ、原告は到底私は納得できない、当然だと思うんですね。あの違法行為を繰り返した岐阜県警の警備部が探し尽くしたと言っても信用されないと思うんですよ。
国家公安委員長ね、これ、どう受け止めますか。やっぱり岐阜県民も原告らが納得できる客観的な方法で判決がしっかり履行されているか点検していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(迫田裕治君) 抹消すべき文書が抹消されていないのではないかというお尋ねでありますけれども、岐阜県警察におきまして、警備部内の各課、それから各警察署警備課、つまり岐阜県警察の警備部門全てにおきまして保有している電磁的記録を含む文書の中から、判決において抹消が求められた原告らの個人情報が記載されているものを漏れなく特定したものと承知をしております。判決において抹消が求められた原告らの個人情報を特定、抹消した結果、そのようになったものと報告を受け止めているところでございます。
なお、岐阜県警察におきましては、情報の抹消後速やかに原告の方々にその旨を通知し、その上で、原告らからの申出を受けて説明の場を設けました。そこで抹消の経緯などについて可能な限り丁寧に説明をしているところであります。
なお、その際、原告らから改めて説明の場を設けてほしいという要望がなされたと承知をしておりまして、岐阜県警察において引き続き適切に対応がなされていくものと承知をしております。
○井上哲士君 原告は全く納得しておりませんし、今示した表にある、情報はあるのにそれに対応する文書がないと、説明付かないじゃないですか。ちゃんとやっていただきたいと思います。
資料四にありますように、今回の判決では、市民運動を全て危険視して、その情報を収集し、監視する必要があるというような大垣警察の裁判での弁明を厳しく批判をしております。そして、特定の民間事業者による風力発電事業の推進を援助し、これに反対又は反対する可能性のある原告らの活動を妨害する目的で個人情報の提供を続けたことは、もう明らかに違法であり、社会的相当性を欠いたと言っているんですね。
重く受け止めておるんであれば、こういう市民運動敵視の活動にどこに問題があって、その原因があったか、どこにあったかと、そのことを徹底して問い直して、全国に徹底すべきだと思うんですね。
国家公安委員会のホームページには、国家公安委員会の役割は、警察行政の政治的中立の確保、警察運営の独善化の防止と、自ら書いているんです。そして、このホームページには、二〇〇〇年の三月に発表された緊急提言も掲載されておりますが、そこには、国民の良識の代表として警察の運営を管理する機能が十分に果たされていないと、自ら公安委員会のことを書いているんですね。
私は、高裁判決受けて、今国家公安委員会がどういう役割を果たすのか厳しく問われていると思います。そのことを強く求めまして、質問を終わります。
内閣委員会(学童保育指導員の処遇改善、大垣警察市民監視事件)
2024年12月19日(木)