○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
三原大臣にお聞きいたします。
昨年の四月九日の当委員会で、犯罪被害者等給付金の支給対象である事実婚の遺族に同性パートナーも含まれるとした昨年三月二十六日の最高裁判決を取り上げました。当時の加藤鮎子共生社会担当大臣に、この判決を踏まえて、同性パートナーも対象となる各府省庁の制度を広げるためのイニシアチブを発揮してほしいと、こう求めました。
その後どのような対応が行われてきたでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 各法令における同性パートナーの取扱いにつきましては、各法令が定める個別の制度の在り方に帰着するものであり、各法令の所管府省庁が責任を持って各制度の趣旨、目的等を踏まえた上で、それぞれ規定ごとに検討を行う必要がございます。
その検討におきましては、個別の制度に係る解釈、運用において様々な課題がありますが、その一方で、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律に関する最高裁判決を重く受け止めるとともに、法令が適用されるか否かの予測可能性を確保する観点からは、できる限り速やかに必要な検討を進めていくこと、これが重要であると考えています。
そこで、先般、内閣官房から各府省庁に対して、各府省庁における判断の参考のため、各府省庁から報告された昨年末時点での検討状況を共有しつつ、今後の検討の迅速化、これを指示したところでございます。
その際には、各府省庁に対し、第一に、最高裁判決を重く受け止め、その内容を改めてよく吟味するとともに、同性パートナーも含まれ得るとされた法令も参考にしながら検討を加速化すること、第二に、国会審議で、偏見等に基づく解釈はしてはならないなどの指摘があった点に十分留意すること、第三に、関連する法令がある場合は、各制度のバランスが保たれるよう関係府省庁間でよく調整することの三つの方針を併せて伝達をいたしました。
その上で、各法令における検討状況については、昨年末時点で、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者という文言と同一又は類似の文言を含む法令のうち、同性パートナーが対象に含まれ得るとされた法令は合計二十四本、更なる検討を要するとされた法令が合計百三十本であることを公表しております。
更なる検討を要するとされている法令については、内閣官房より検討の迅速化を指示しているところであり、所管府省庁において更に検討を進めるところと承知をしております。
○井上哲士君 DV防止法など新たに二十四の法令が対象になることを大変関係者の皆さんは喜んでおられます。さらに、他の制度の検討も是非迅速に進めていただきたいと思います。
他方、この同性カップルの結婚を認めない民法等の規定は憲法に反するとして国に賠償責任を求めた訴訟の控訴審判決が三月七日、名古屋高裁でありました。判決は、法の下の平等を定めた憲法十四条一項と、個人の尊厳と両性の本質的平等に基づく家族法の制定を求める二十四条第二項に反するという判断を示しました。
全国で起こされている同様の裁判で二審判決は四件目でありますが、いずれも同性婚を認めないのは憲法違反という判断がされております。
この名古屋高裁判決では、各自治体で広がるパートナーシップ制度でも、同性カップルが法律婚制度を利用できないことによる不利益は解消、軽減されているとは言えないと指摘をしておりますが、大臣はこの判決をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 三月七日に御指摘の判決が出されたことは承知をしております。
同性婚を含む婚姻制度については、法務省の所管ですので私から言及することは差し控えますが、男女のカップルと同様の法的保護を受けられないことでおつらい思いをしている方がいらっしゃるということは、これは私も重々承知をしております。
共生社会担当する大臣としては、この性的指向及びジェンダーアイデンティティーの多様性について国民の理解がより深まるよう、引き続き取り組んでまいります。
○井上哲士君 さらに、昨年十月の国連女性差別撤廃委員会の総括所見は、同性婚を認めるように勧告をしております。各法令による同性パートナーの取扱いの検討を加速化することはもちろん重要でありますが、この四つの高裁判決を踏まえれば、同性婚の法制化に踏み込む必要があると考えます。
名古屋高裁判決は、民法の規定にある夫婦などの、性別中立的な文言、これを変更、婚姻の当事者などに変更すれば、婚姻とは別の制度を設ける場合と比べて膨大な立法作業は必要ないと、具体的にも述べているわけですね。
今回の同性パートナーの制度適用問題では、各府省に検討を促す上で共生社会担当大臣としてのイニシアチブは発揮されたと思っておりますので、是非この問題でも、確かに所管は民法、法務省でありますけれども、是非検討を促す上で政府内で役割を果たしていただきたいと強く求めておきます。
その上で、保育の問題をお聞きしますが、こども家庭庁は昨年の十二月に保育政策の新たな方向性を公表しております。今後の保育政策をどのような柱で進めようとしているんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
これまで保育政策につきましては、新子育て安心プランに基づきまして待機児童対策を中心に保育の量の拡大を図ってまいりました。その結果、保育の受皿整備が着実に進みまして、待機児童数で、令和六年四月一日時点で見ますと二千五百六十七人となり、ピークであった平成二十九年四月一日時点の二万六千八十一人と比較をしまして十分の一以下となっております。
こうした状況を踏まえまして、令和七年度以降の保育政策につきましては、量の拡大から質の向上へ転換することとし、昨年十二月に取りまとめました保育政策の新たな方向性におきまして、三つの柱、一つ目、地域のニーズに対応した質の高い保育の確保、充実、二つ目といたしまして、全ての子供の育ちと子育て家庭を支援する取組の推進、三つ目といたしまして、保育人材の確保とテクノロジーの活用などによる業務改善、この三つを柱として取りまとめたものでございます。
○井上哲士君 待機児童がピークから十分の一になったということが実態と合っているのかどうかは後ほど議論したいと思うんですが、その上で、この三つの柱について、そのベースとなる理念について確認をしておきたいと思います。
子どもの権利条約は、子どもの権利とは、子どもの主体性が尊重され、子どもの要求を満たしてくれる大人との応答的な関係が保障されることを通じて成長、発達する権利だと明らかにして、子どものケアのためのサービスや施設の提供を締約国の義務としております。
この保育政策を考える前提として、全ての子どもたちが保育を受ける権利を持っており、その権利を保障する責任が政府にあるというこの子どもの権利条約に示された理念が基本に据えられるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 児童の権利条約においては、全ての児童について生命に対する固有の権利を有することを認め、国が児童の生存及び発達を可能な範囲において確保する旨が期待されていると承知をしております。
また、令和五年四月に施行されましたこども基本法では、児童の権利条約等の精神にのっとり、全ての子供が将来にわたって幸福な生活を送ることができるこどもまんなか社会の実現を目指し、社会全体として子供政策に取り組むという理念が定められております。
こうしたこども基本法の理念等も踏まえ、昨年十二月に公表した保育政策の新たな方向性の中では、今後の保育政策の三つの柱のうちの一つとして、先ほど局長からも答弁ありましたけれども、全ての子供の育ちと子育て家庭を支援する取組の推進を掲げてあります。この方針の下で、こども誰でも通園制度の推進ですとか、障害児、医療的ケア児等の受入れ強化等に取り組んでいき、地域において一人一人の子供の育ちと子育てが応援、支援されるような社会を実現してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 全ての子どもの育ちと子育ての応援というお話でありますが、全ての子どもたちの保育を受ける権利を保障するということの明言がございませんでした。私はやっぱりこの立場に立ってこそ本当に全ての子どもの育ちと子育て家庭を本当の意味で支援をできると考えるんですね。
決め手となるのがやっぱり保育士の処遇改善です。子どものケアを専門的な立場から提供するのが保育士であります。その保育士に対して専門職にふさわしい処遇を確保することは、子どもの権利を保障することと一体のことであります。
この新たな方向性は、この保育士の処遇改善について他職種と遜色ない処遇を実現するとしておりますけれども、これは具体的にどういうことでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 昨年十二月に公表いたしました保育政策の新たな方向性では、保育士の処遇改善に係る今後の目標として、他職種と遜色のない処遇の実現を掲げております。これについて、具体的な職種や数値目標を設定しているものではありませんが、全産業平均の賃金も一つの目安としております。
保育士等の処遇につきましては、令和六年度補正予算では一〇・七%の大幅な改善を実施し、令和七年度予算案でも財源を確保した上でこれを反映しております。仮に各現場でこの水準の賃上げが行われた場合、平均賃金を用いて機械的に計算すると三万円を超える改善となるほか、これを含め平成二十五年度以降では累計で約三四%の改善を図ってきております。
政府のこれまでの取組により、全産業の平均賃金との差は縮小してきており、今後も改善状況を注視しながら、引き続き、こども未来戦略に基づき民間給与動向等も踏まえた更なる処遇改善、進めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 全産業平均並みに引き上げることを一つの目安とおっしゃいましたけれども、目標に掲げるということで理解してよろしいですか。
○政府参考人(藤原朋子君) 今回、十二月に取りまとめました新たな方向性では、具体的な職種や数値目標を設定しているものではございませんけれども、この新たな方向性の中で、全産業平均の他職種と遜色のない処遇の実現というものを目指しているということは明記をしておりますので、そういった意味では、全産業平均の賃金も目安として考えてしっかり見ていきたいと思っております。
具体的には、平成二十四年の賃金構造基本統計調査で見ますと、当時は八万七千円ほどの格差がございましたが、令和五年においては四万八千円という格差ということまでに縮まっておりますし、その後、令和五年の五・二%、令和六年の今般の一〇・七%という改善が続いてまいりますので、しっかり引き続き処遇の改善に努めていきたいということでございます。
○井上哲士君 私、この間、質疑の中で、この保育士の給与水準を全産業並みに引き上げること、全産業平均との格差を抜本的に正すことを目標とするべきだと求めてまいりました。
これまで、累次の処遇改善で平均は、賃金との差は縮まっていると答弁ありましたけど、今回、目標と私は言っていただきたかったんですが、目安という言葉はありました。これ本当にここを目標として進めていくということを強く求めたいんですが、肝腎なことは、どうやってやるかなんですね。この間、様々な処遇改善が図られて、人事院勧告を反映し、公定価格の引上げなどが行われてきました。現場の保育士の皆さんにお聞きしますと、賃上げの実感はないという声が非常に多いんですね。なぜかと。人件費は配置基準を基に算定されますが、実際には多くの保育所で配置基準以上に配置されているわけですね。そのため、実際よりも少ない基準どおりの人数で算定された人件費をそれよりも多い人々で分けますから、一人当たりの賃金額は当然引上げが少なくなると。だから実感がないということなんですね。
こういう実態があるということは、こども家庭庁、把握しておるでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
委員御指摘いただいたように、保育の現場を見ますと、配置基準を超える保育士が配置されているという実態あるというふうに承知をしております。
令和六年度の経営実態調査を見ましても、公定価格上の職員配置以上に実際の配置の方が高いということは実際に見えます。ですので、確かに機械的な計算どおりに上がらないということ、いう場合があるということは重々承知をしているわけですが、例えば、今回の配置改善につきまして、今年度から四、五歳児に関しての配置改善が行われ、また、令和七年度予算案では新たに一歳児の配置改善を加算で行うというふうに予定をしているわけでございますが、今般の大幅な処遇改善につきましても、新たに必要となる職員の処遇改善分も合わせて算定をされることになります。
また、今回の人事院勧告を踏まえた公定価格の増額分については全て人件費でございますので、その全額を確実に賃金の改善に充てることを事業者に要請するとともに、その結果については報告を求めるということにしております。
あわせて、令和七年度から保育所の経営情報の見える化が始まりますので、保育所等から報告された経営情報を分析することによりまして保育所等の給与状況等を明らかにするなど、透明性の向上も図ってまいります。
こういった取組を図りながら、引き続き、こども未来戦略に基づいて、民間給与動向も踏まえながら、更なる処遇改善に努めていきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 更に言えば、そもそも福祉職の給与表の号俸の金額が低過ぎるんですね。福祉職の給与表ができた当初の議論では、保育士の給与は、当時の保育士の平均勤続年数が短大卒八年だったために、それに見合う賃金水準として定められたと聞いておりますが、現在では平均勤続年数は十一年ですと言われていますので、これ、実態に合わないわけですね。
ですから、こういうこの公定価格の水準を引き上げることと、そして配置基準の改善の両方一体に取り組むことによって、実際に現場で引き上がるということを是非進めていただきたいと思います。
その上で、こども誰でも通園制度について聞きます。
二〇二五年度の実施状況を踏まえて、本格実施に向けて利用可能時間や人数、人員、設置、運営の基準等を検討するとしております。しかし、これまでの試行的事業も今年四月から制度化される事業も実施主体は市町村ですが、本格実施になればこれ利用者と施設との直接契約になって、全く別の制度になると思うんですね。
私、この間、現行試行的事業に取り組んでいる現場の保育士の皆さんからお話伺いました。名古屋市の保育士の方は、市の試行的事業では子育て困難家庭を対象として実施しているけれども、本格実施では利用者と施設の直接契約になって、行政の裁量が利かない制度になるんじゃないかと不安を口にされておりました。
今は就労していないけれども、子供や親の状況から保育が必要とされる子育て困難家庭を行政がしっかり把握をして制度につなげているけれども、本格実施になって施設との直接契約になれば、こういう子育て困難家庭を制度につなげていく上で行政の関わりが弱まって、この制度から漏れてしまうんじゃないかと、こういう懸念の声でありますが、本格実施でこういう懸念にはどういうふうに応えていくんでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) こども誰でも通園制度は、子育て世帯の保護者の就労等を問わず、全ての子供の育ちを応援し、子供の良質な成育環境を整備するため創設するものでございます。お尋ねのように、支援を必要とする家庭の子供も適切にこの制度に結び付くよう取り組むことは大変重要と考えております。
御指摘のとおり、令和八年度からの制度の本格実施においては、市町村による利用調整を経ず、保護者が事業所の空き状況を確認し、直接利用申請する予定としておりますが、そもそも制度利用に当たっては、保護者の居住市町村において、こども誰でも通園制度の利用対象者であることを認定した上で利用いただく仕組みとなっており、市町村が関与しなくなるということではございません。市町村においては、利用対象者が認定の申請をしているか、国において構築するシステムを通じてどの程度利用を、制度を利用しているのかとか、そうした状況を把握して、支援が必要な家庭に本制度の利用を勧奨することが可能となっております。さらに、令和八年度からの本格実施に当たっては、市町村が必要と認める場合には、保護者に対して利用のあっせんを行うとともに、必要に応じて事業者に対し子供の受入れの要請を行うほか、事業者は市町村によるあっせんや要請に協力しなければならないという法律の規定も施行されることとなります。
この仕組みも活用して、特に支援が必要な御家庭の子供の円滑な利用等を促進してまいりたいと思っております。
そしてまた、このほかに、令和七年度の制度化に向けて現在作成していますこども誰でも通園制度の実施に関する手引におきましても、特に支援を必要とする家庭の子供の優先利用に関する記載、これ盛り込んで、現場における工夫の例として御活用いただくこととしております。
○井上哲士君 要支援家庭というのはやっぱり自分から、自ら助けを求めることも困難なところが多いわけですよね。やはり、このこども誰でも通園制度は、基本的に市町村の利用認定も施設への利用申込みということになるわけですから、本当にきちっと把握ができるのかと、やっぱり現場でそういう不安の声が上がっているわけですから、これはきちっと対応していただきたいと思うんですね。
試行的事業を実施しているある京都市市営の保育所は、週三日、午前九時から午後五時までの間に一回二時間の単位で、各時間枠、子ども四人までという形で実施をされております。
通常保育とは別室を確保して、二人の職員を配置して、担当されたベテラン保育士の方は、二時間ごとに子どもが入れ替わるために、常に子どもの泣き声が続くと。午前十一時から十三時の時間枠で来所した子どもには離乳食や給食を食べさせる予定だったけれども、泣き続けるために食事もできないまま時間が来てしまうこともあったと、こういうお話でありました。
川崎市でも試行的事業の状況を伺いましたけど、現場の保育士の皆さんからは、月十時間の利用では短過ぎると、もう慣らし保育で終わってしまって、保護者と保育士の信頼関係もつくれないとおっしゃっておりました。
今後、利用可能時間検討されるようでありますが、利用可能時間を超える利用があった場合に国の給付はどのようになっていくんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
こども誰でも通園制度における令和七年度市町村事業となるわけですが、令和七年度の利用可能時間につきましては、自治体や保育事業者にも御参画いただいた検討会で御議論いただきまして、対象となる全ての子供がひとしく利用できる制度とするという観点から、月十時間というものを国による補助基準上の上限とするということとしたものでございます。
この月十時間を超える場合において国からの補助というものは出ませんが、各市町村において、それぞれの実情に応じまして、補助の対象となる月十時間を超えてこども誰でも通園制度を実施していただくことは妨げないというふうに整理をしたところでございます。
○井上哲士君 ですから、十時間を超えますと自治体負担や利用者負担に跳ね返ることにならざるを得ないわけで、経済的に困難な家庭が利用できなくなるんじゃないかという懸念も出されております。
川崎市では、試行的事業の事業者は、公立保育所を始め、株式会社立の保育所、幼稚園、小規模保育事業所、認定こども園と多数ですけれども、実際の利用状況を見ますと、もう圧倒的多数は公立保育所なんですね。
川崎市がこの条例制定に当たって実施したパブリックコメントには、親の就労に関係なく子どもを預けられるのは大変助かるが、保育環境が悪いところに預けてまで仕事をしたりリフレッシュしたいという気持ちはないと、こういう声が寄せられております。
先ほど紹介した京都の保育士の方は、制度を利用された母親の中には、子どもが生まれてから落ち着いて温かい御飯を食べたことがないという方もいて、親の就労の有無にかかわらず安心して預けられる制度は必要だと思うけれども、そういうニーズに応えるのならば、一時預かりのリフレッシュ保育を拡大すれば済むことではないかと、こういうふうに話しておられました。
この本格実施に向けた検討に当たって、こういう実際に事業に取り組んでいる現場の保育士の皆さんから、しっかりと直接意見を聞くべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 私も、昨年の十一月に川崎市の保育園視察させていただいて、実際に現場で働いている保育士の皆さんからお話を伺いました。
その中で、保育士の皆様からは、初めは短い時間の中で信頼関係築くの難しいから不安だなと思っていらっしゃったけれども、実際にやってみると、二、三時間ずつ利用することで無理なく少しずつ慣れていくことができると感じたと。自由時間をこうして組み立てていけるのも、これはいいことだと思うと。そして、支える側として協力しながら、地域の子育てを孤立させたくないと考えているといった御意見等々伺ってまいりました。
この令和七年度の制度設計に当たりましては、実際に試行的事業を実施している自治体や保育事業者にも検討会に参加していただいて、実際実施している園の方にも参画をしていただいて御議論をいただいた。そして、担当職員が試行的事業を実施する全国の施設をこれ訪問して、保育士を含めた現場の御意見、今ずっと伺って、直接伺って、検討してまいったところでございます。
こうした現場の声、しっかり踏まえながら、この七年度の制度化に当たりましては、利用時間であるとか可能時間であるとか配置の、職員の配置、単価等の制度設計、こうしたことを行うとともに、例えば、保育士の御意見も踏まえて、現場作成に、現場の実施に助けとなるような手引ですとか事例集のようなもの、こうしたものを作成して取り組んで、先ほども申し上げましたように、特に支援を必要とする御家庭のお子さん、優先利用に関する記載も手引に盛り込むといった取組等行っております。
令和八年度からの本格実施に向けた検討に当たっても、引き続き、皆様の御意見を聞いた上での、御意見な丁寧をしっかりと伺った上での実施ということに努めてまいりたいと思っております。
○井上哲士君 役所が段取りしたところでいい話だけ聞いても、実態とは私、かなり違うと思うんです。いっぱい全国から声を寄せられていますよ。実際に利用されている方、保育に取り組んでいる現場の保育士の皆さんが、やっぱり公的責任で設備や体制がしっかり確保されて安心して子どもを預けられる施設を求めているわけで、私は、今のこのこども誰でも通園制度がこうした願いに応えるものにはなっていないということを指摘をしていきたいと思います。
今回の方向性が、待機児童解消が進んだということを前提に、受皿中心だったこれまでの保育政策を転換するという話であります。先ほども、待機児童数はピーク時の十分の一というふうなお話がありました。
じゃ、実態はどうなのかと。そもそも、待機児童数というのは、認可保育所に入所を申し込んだにもかかわらず入所できなかった児童の数だったんですね。それを、政府が定義を様々変えまして、現在は、認可外施設の企業主導型保育所とか認可施設へ移行しようという認可外施設、幼稚園の預かり保育も保育所入所とカウントしておりますし、さらに除外四類型に当たる人数は待機児童から除外しています。
いわゆる隠れ待機児童と呼ばれている子どもたちですが、お手元にその資料をお配りをしておりますが、二〇二四年、待機児にカウントされない除外四類型は七万千三十二人に上りまして、待機児のピークの二万六百八十一人をはるかに上回るんです。去年は四千八百六十四人も増えています。その中でも、四千四百八十人で半分以上を占めているのが特定の保育園等のみ希望している者だとなるんですね。
何か親のわがままみたいに聞こえますけど、実際には、認可保育園に入所させたいという願い、それから、上の子と同じ保育所に入所を希望しているというケースも含まれているというわけですよ。兄弟同じ保育所に通わせたいというのは当然の願いでありますし、親にとっては大変な負担になるわけですから。
こういう除外四類型は抜本的に見直すし、そして、こういう隠れ待機児童を生み出してきたこれまでの保育政策、この公的責任を後退させてきた、規制緩和と企業参入を持ち込んできた、こういう政策の抜本改定こそ求められていると思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(三原じゅん子君) 兄弟で異なる保育所に通っている場合など、待機児童にはカウントされていないけれども希望どおりの保育所等に通えていない方が一定数いることは承知をしております。
この点、保育の受皿整備に当たって市町村が子ども・子育て支援事業計画を策定する際には、潜在的なニーズを含め、実態を把握するよう自治体にお願いをしているところであります。
その上で、お尋ねのように、兄弟や姉妹で同じ保育所等への入所を希望する方につきましては、利用調整における優先事項として自治体宛ての通知で明示をしております。各市町村において必要に応じ優先利用の取扱いを実施いただいているというふうにも承知をしているところでございます。
加えて、保育所等への入所の利用調整においても、潜在的なニーズも含めた保護者の意向を丁寧に確認して調整するため、自治体が保育コンシェルジュによる相談支援を通じた丁寧な利用調整などを行うよう、国としても支援を行っています。
保育の利用に当たりは、個々の希望や事情は様々でありまして、各市町村におけるニーズの把握、利用調整、これ丁寧に進めていくこと、重要と考えておりますが、除外四類型に該当する方の判定や、その後のフォローに関し各地域でばらつきが生じている点につきましては、現在、実態把握を行っており、その調査結果を踏まえつつ必要な対応を図ってまいりたいと思っております。
○井上哲士君 時間ですので終わりますが、全ての子どもがやっぱり保育を受ける権利を保障すると、こういう立場での保育政策への大きな転換を改めて求めまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
内閣委員会(同性婚の法整備、「保育政策の新たな方向性」について)
2025年3月13日(木)