30歳をすぎたころ、母が「被爆者手帳を取ったよ」というんです。え、なんで今、と聞いたら「(姉の)結婚の障害になりたくなかったから...」と。驚きました。今もあまり詳しくは話さないのですが、女学校で、逃げてきた人の看護に当たっていたようです。こんなに身近な人を、何十年も悩ませ続けた放射能とは、なんと理不尽なものかと思いました。
3・11では津波で街が流されました。何人もの被爆者から「被爆直後の広島と同じ風景だ」という声を聞きました。それに、福島原発事故が重なり、大勢の避難者が出た。「放射能の被害」への怒りが、国会での追及につながっています。
「実態をつかむ」
国会質問で大事にしているのは「生の実態をつかむこと」です。根っこには政治のゆがみがあります。表面に現れてくる個別具体的な問題は多様ですが、底流にあるのが普遍的な「アメリカいいなり、財界優先」の自民党型政治です。
それが一番表れている米軍特権問題での追及は、誰にも負けないと自負しています。
外交防衛委員会や法務委員会で継続的に質問してきました。米兵がレジャーでレンタカーを使用して高速道路がタダ、爆音訴訟で賠償命令が出ても日本政府が立て替えたり、犯罪で捕まった米兵の食事が日本人や他の外国人よりはるかに豪華だったり。オスプレイは日本上空を自由に飛ぶし、公務外の米兵犯罪でも重要犯罪以外は「起訴しない」という日米の密約まであった。
目の前の矛盾を突きつめていったら「アメリカいいなり政治」という根っこに突き刺さるんですね。
「一番いい質問」
人権問題にもずっととりくんできました。
知的障害のある名児耶匠(なごや・たくみ)さんが成年後見人をつけたら選挙権を失った問題では、2011年の提訴時から国会でとりあげてきました。先日、東京地裁が〝成年被後見人に一律に選挙能力がないとみなして選挙権を奪うのは違憲〟とする判決を出しましたが、政府は控訴しています。
私は、4月4日の倫理選挙特別委員会で「投票ごとに選挙能力を判断することは不可能。ただちに公選法を改正して権利を回復すべきだ」と主張しました。新藤義孝総務相は「各党間の検討で方針が示されたら速やかに対処したい」と答えました。
質問後、名児耶さんのお父さんから「一番いい質問をしてくださった」と電話がありました。うれしかったですね。
ほかにも、難民や受刑者の人権擁護に取り組んできました。「票にならない」という人もいますが、こういう人たちの人権が守られずにどうして国民全体の人権が守れるのか、と思います。
「カネと権力」で不正やボロもうけをする人たちがいる一方で、虐げられている人たちがいる。こんな理不尽を許さない。放射能の苦しみを繰り返させない。一人ひとりの人権を守る。その仕事の先頭に、これからも立っていきます。
(終わり)
(了)